2027年度には社員20万人をAI活用実践人財に
NTTデータグループ
正野勇嗣 Head of Global AI Office(室長)に聞く
AIガバナンスを巡る論点2025 #16
<最前線> 企業のAI利活用
OpenAIの生成AI「ChatGPT」が2022年11月にリリースされてから3年が経過した。日本の企業・組織における導入・利活用はどこまで進んでいるのか、今後の課題は何か――。AIガバナンスを巡る論点をあぶり出すシリーズ第16回は、正野勇嗣 NTTデータグループ Head of Global AI Office(室長)へのヒアリングの骨子を凝縮してお伝えする。(聞き手は、菊池尚人 デジタル政策フォーラム 代表幹事代理/慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科 特任教授)
正野勇嗣 NTTデータグループ Head of Global AI Office(室長)AI利活用の現状
◾システム開発/SIer領域に変化の認識
- 生成AIは「使うか、使わないか」を議論する段階を過ぎ、「どう使うか、どこまで使いきれるか」のフェーズに移行
- 「コード生成など単体タスクの自動化」(レベル1)から「複数タスクを統合した開発ロールの意思決定」(レベル2)、「プロジェクト単位のAIが連動した開発シナリオの一貫した支援」(レベル3)へと全工程に拡大
- これまでに、「特化型AI」から「生成AI」「AIエージェント」の活用へと進んできた。今後は、自ら目的を理解し計画・行動・学習を繰り返す「Agentic AI」、人間並みの知能を持ち幅広い課題に対応できる「AGI(汎用人工知能)」、人間を超える知能で社会や科学を設計できる「ASI(超知能AI)」へと急速に進化していく
- SIerが提供すべき価値が大きく変わる。人的リソース提供の価値は消失し、「人間が作る」から、「AIが作る成果を保証しビジネスに変換する」役割へ
- 生成AI時代におけるSIerの3つの役割
(A)変革パートナー: AIを活用した高速な業務改革・価値創出をリード
(B)AI-Native SIer: 開発プロセスをAIを前提に再設計し、品質と説明責任を担保
(C)特定領域のディープスペシャリスト: 特定業界・技術領域に深く特化し、競争優位を確立 - 従来の「人・月を積み上げるSIモデル」は構造的に変化。製造工程に人・月が集中する「山型カーブ」から、前工程のコンサルティングの充実や後工程の品質管理や継続的改善に重点を置く「逆U字型カーブ」にシフトする
◾NTTデータのAI活用戦略
- AIを最大限に活用し、「労働集約型」から「AI駆動型ビジネスモデル」への展開を推進
- 「積極的なAI活用の推進」と「AIガバナンスの徹底」の両輪で取り組み、ビジネス拡大を図る
- 「AIドリブン開発」の体制を早急に整備へ(NTTデータ、AIがシステム開発 IT人材不足を解消 – 日本経済新聞)
◾推進組織の整備
- NTTデータグループ(持株会社)に「Global AI Office」を設置(2023年10月)。グループ全体のAI戦略の立案と投資を実行。また、グローバルでの法規制対応、コンプライアンス対応、リスク管理などを担当する「AIガバナンス室」も併設している(2023年4月)
- NTTデータに「GenAIビジネス推進部」を設置(2024年4月)。国内AIビジネスの加速を担当
- 米NTT DATA Inc.のChief AI Officer(Abhijit Dubey CEOが兼任)が海外リージョンのAI戦略立案と実行管理を管掌
- 新会社NTT DATA AIVistaを米シリコンバレーに設立(2025年12月)。先端AI技術に基づく新たな価値創出、顧客の経営課題解決、業務プロセス変革の実現などを推進する(AIネイティブな新ビジネス創出を推進する新会社CEOにBratin Sahaが就任 | NTTデータグループ – NTT DATA GROUP)
AI導入リーダーとしての心がけ・気づき
◾今後の課題
【People】
- 経営層やミドルマネージャーのマインド変革: 既存業務の改善ではなく、業務プロセスそのものをAI前提で再構築する変革意識が重要
- 新ロールに対応した人材不足: 品質保証やビジネス連携が重要。顧客の最前線でAIを活用し実装していくエンジニアの育成が急務
【Process】
- AIネイティブ開発への移行: AIの恩恵を最大限に享受するためには、従来プロセスの延長ではなく、AIを中心としたプロセスの再設計が重要
- ガバナンスと法的枠組みの整備: 全社統一のAI利用ルール・ガバナンス策定に加え、倫理・法的枠組みの確立が必要
【Technology】
- 技術の目利き力: 進化が速いAI技術に対してグローバルでアライアンスを組むなど、インテリジェンス機能を設けて変化に追随。適性を見極めシステムに組み込んだ上でROIを向上させることが重要
- レガシーシステムとの接続やAI-Readyなデータ基盤の整備: AI活用を阻む既存のレガシーシステムや構造化されたデータ基盤の整備が必須
◾「人財育成」が最重要課題
- 全世界の社員約20万人を対象とし、生成AIの人財育成フレームワークを策定
- 昇段制度(Whitebelt→Yellowbelt→Greenbelt→Blackbelt)を設け、競争意識・成長実感を埋め込む
- 生成AI実践人財(Yellowbelt・Greenbelt・Blackbelt)は2025年10月に7万人に到達。2027年度には全社員20万人を目指す
◾これまでの成功要因
Interviewee
正野 勇嗣 / Yuji Shono
NTTデータグループ Head of Global AI Office(室長)
NTTデータグループ全体の生成AI戦略および普及推進を担当。ソフトウェア開発技術のR&Dに従事後、大規模開発プロジェクト支援、全社技術投資戦略の立案、グローバルData&Intelligence戦略・連携などに従事。開発自動化技術やAI技術に関する雑誌・記事を執筆。




